「自分がどうありたいかは、自分が決める」
2026年7月16日放送のあさイチは、思わず手を止めて見入ってしまう内容でした。
前半は、作家・西加奈子さんの乳がん治療の体験記。後半は、なでしこジャパンのユニフォームが変わった理由。
一見まったく別の話に見えますよね。でも見終わったあと、私のなかにはひとつの言葉だけが残っていました。
「自分の体のことは、自分が決めていい」
40代を過ぎると、体の不調も、まわりからの期待も、少しずつ増えていきます。そのなかで「私はどうしたいのか」を口に出すのって、実はすごく難しい。今回の放送は、その難しさに真正面から向き合った2つの物語でした。
この記事では、放送の内容をまとめながら、健康美容ライターとして、そして分子栄養学を10年以上学んできた立場から、少しだけ補足を添えていきます。
【前半】作家・西加奈子さん「くもをさがす」
36万部のベストセラーが生まれるまで
西加奈子さんは27歳でデビューし、直木賞をはじめ数々の賞を受賞してきた作家さんです。一貫して、社会や人間を独自の視点で見つめ続けてきました。
そんな西さんがカナダ滞在中に乳がんと診断され、その治療の日々を綴ったノンフィクションが『くもをさがす』。36万部のベストセラーとなり、大きな反響を呼んでいます。
放送では都内の仕事場を取材。子どもの頃から、本を読むのと同じくらい絵を描くのが好きだったという西さん。ご自身の本の表紙のほとんどは、西さん自身が描いたものだそうです。描き終わったばかりの絵も見せてくれました。
9月には5年ぶりとなる長編小説が出版される予定とのこと。以前書かれた『サラバ』が特に面白かったので、次回の作品も楽しみにしています。
「決めるのはカナコやで」というひと言
放送でいちばん心に残ったのが、このシーンでした。
具体的な治療方針を医師と相談したとき、西さんはこう言われたそうです。
「決めるのはカナコやで。あなたの体のボスは、あなたやねんから。」
この「あなたの体のボスは、あなた」という言葉が、その後の大きな決断につながっていきます。
西さんは両乳房を切除したあと、胸を再建しないことを選びました。
「再建しない」という選択は、決して当たり前のものではありません。周囲の視線、女性らしさへの思い込み、そういうものすべてを引き受けたうえでの決断です。
そして西さんがたどり着いたのは、「他人がどう見るか」ではなく「自分が自分をどう認めるか」という答えでした。
治療のあとにも、揺らぎは残る
ここが放送の誠実だったところだと思います。
治療を終えて新しい日常が始まった。でも、心の揺らぎが消えたわけではない——西さんはそう語っていました。
帰国後、再びがんになるリスクを減らすため、卵巣を切除。その結果、女性ホルモンが急激に低下し、体調不良や、急に襲ってくる不安と向き合うことになったそうです。
そんな西さんがいま夢中になっているのが柔術。マットの上では、作家という肩書きも、がん経験者であることも関係ない。ただの「一人の人」に戻れる時間です。
「書けなくなっても自分を愛せるか」を鍛えている——西さんのこの言葉に、私はしばらく動けませんでした。
スタジオの反応
鈴木アナは「普段何気なく生きていると社会の役割に引っ張られて、『私がそう思う』とか『私を返して』という気持ちを忘れているなと思った」とコメント。
ニッチの江上さんは、20代後半で卵巣の病気が見つかり片方を摘出した経験を明かし、西さんの言葉ひとつひとつに共感し、勇気づけられたと話していました。
なお、西さんの乳がん発覚のきっかけは、カナダで虫刺されで受診したときに、ついでに胸のしこりを医師に相談したことだったそうです。
「ついでに聞いてみる」が、命を守ることがある。 これは私たち全員に当てはまる話だと思います。
【分子栄養学メモ】卵巣を失ったあとの体で起きていること
ここから少しだけ、栄養の視点を添えさせてください。
西さんが経験した「卵巣切除後の体調不良と急な不安」は、更年期を迎える私たちの体で起きていることと、実はとても近い現象です。違いは、そのスピードだけ。
エストロゲンが減ると、体のなかでは主に3つのことが起こります。
①セロトニン・ドーパミンの働きが不安定になる
エストロゲンには、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンや、意欲に関わるドーパミンの働きを支える役割があります。エストロゲンが減ると、この支えがなくなり、気分の落ち込みや理由のない不安が出やすくなります。
「気持ちの問題」ではなく、材料と環境の問題であることが多いのです。
セロトニンやドーパミンをつくるには、トリプトファンやチロシンといったアミノ酸に加えて、鉄・ビタミンB6・葉酸・ナイアシンなどが必要です。40代女性は隠れ鉄不足の方が本当に多いので、まずはフェリチン値を知ることから始めてほしいなと思っています。
②骨からカルシウムが抜けやすくなる
エストロゲンは、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きにブレーキをかけています。このブレーキが外れると、骨密度は一気に下がっていきます。
後半のなでしこジャパンの話につながる、とても大事なポイントです。
③自律神経が揺らぎやすくなる
ホットフラッシュ、動悸、寝つきの悪さ。この時期に増える不調の多くは、自律神経の揺らぎと関係しています。
私自身も、40代後半に入ってから夕方になると肩がガチガチに固まる感覚が出てくるようになりました。自分で調べて勉強しながら、ビタミンBやマグネシウムを意識して摂るようにしました。またヨガやフラダンスで体を動かしたりと、いろいろ試しながら付き合っています。
完璧に消すことより、うまく付き合う方法を見つけるほうが、ずっと現実的です。
【後半】なでしこジャパンのユニフォームが青くなった理由
きっかけは、2024年パリ五輪
サッカー日本代表のユニフォームは、ブルーがベース。でも、パンツの色は男女で異なっていました。
2024年のパリオリンピックで、女子日本代表は白いユニフォームを着用。ところが試合中に撮影されたチームメイトの写真が「下着が透けて見える」としてネット上で拡散されてしまいます。
白いユニフォームを着ることがストレスになり、選手に負担をかけているのではないか——チームマネージャーの山本りささんは、強い危機感を抱きました。
実は、この出来事の前から、一部の選手からは不安の声が上がっていたそうです。
「透けない白」は、作れなかった
事態を重く見た日本サッカー協会は、大手スポーツメーカーとともに「透けない白いパンツ」の開発に乗り出しました。
けれど、完全に透けないようにするのは技術的に難しいことがわかります。
そして2025年11月、新ユニフォーム発表に合わせて大きな方針転換が発表されました。女子は上下とも青。
長谷川唯選手は「一つ問題が起きてからにはなってしまいましたが、配慮してもらえたところは一歩前進」と話しています。
「問題が起きてから」でも、変えられる。 これは希望のある話だと私は思いました。
なぜこれまで白だったのか
ユニフォームは国旗の色を取り入れるケースが多く、日本も慣例として白を使ってきました。
つまり、誰かが悪意を持って決めたわけではないんです。ただ「ずっとそうだったから」。
それを変えたのは、トップレベルの選手たちが声を上げたことでした。
女性がスポーツを続けられないと、何が起きるのか
放送では、ここから健康の話に展開していきます。
女性がスポーツを続けることの重要性は、最新研究でも明らかになっています。
中学・高校時代と高齢期に運動習慣がない女性は、骨粗鬆症のリスクが約54%高い。
田村好史教授は、若い頃から運動を続けられる環境を整えることが大切だと指摘していました。
分子栄養学メモ:骨の貯金は20代でピークを迎える
骨量は20代でピークを迎え、そこから少しずつ減っていきます。そして更年期にエストロゲンが減ると、減り方が加速します。
つまり、10代でどれだけ骨を貯金できたかが、70代の骨密度を左右するということ。
「透けるのが恥ずかしいから運動をやめた」——この選択が、何十年も先の骨折リスクにつながっている。ユニフォームの色の話が、決して些細な話ではない理由がここにあります。
骨を守るために大事なのは、カルシウムだけではありません。ビタミンD(日光と魚)、ビタミンK2(納豆)、マグネシウム、そしてタンパク質。骨の半分はコラーゲン、つまりタンパク質でできています。
そして何より、骨に体重をかける運動。骨は刺激を受けて初めて強くなります。
生理や体調変化を、チームで共有する
放送では、埼玉・新座の立教大学女子ラクロス部の取り組みも紹介されました。
- 練習前に集まり、その日の体調を数字で申告する
- 一人ひとり、練習の強度を変える
- メンバー選考でも、生理などで実力を発揮できなかった場合に評価を下げない
今年4月の新入生歓迎会では、新入生たちに「安心してスポーツに取り組める環境がある」ことを伝えたそうです。
高校時代にチアリーディング部に所属していた窪田知世さんは、生理について話しづらさがあったと明かしていました。
着替え場所という、見落とされてきた課題
もうひとつ、静岡・藤枝の藤枝順心高校の女子サッカー部の話。
自校には更衣室があるものの、他校での試合では更衣室がないことも多く、車の中や木陰で着替えることもあるそうです。
女子高校生400人を対象にした調査では、更衣室がないと答えた割合は47.5%。そのうち3割以上が、スポーツを続けることに不安を覚えたと回答しています。
半数近くです。これは個人の我慢で解決する問題ではありません。
スタジオの反応
江上さんは「時代が変わってきている、良いことですよね」とコメント。
八嶋智人さんは「何にストレスを感じているのかをちゃんと共有することが大事で、そこからどうするのか具体的な方法が見えてくる。僕らの『根性だ』と言っていた時代より全然良くなっているんでしょうけど、まだまだなのかなという部分もある」と話していました。
5月には、大手スポーツメーカーと女子競技団体が、女子を教える指導者を対象にした講習会を開催。テーマはアンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)でした。
今日からできる、3つのこと
放送を見て終わりにしないために。私が思う「今日からできること」を3つ挙げます。
①「ついでに」聞いてみる
西さんの乳がんは、虫刺されの受診の「ついでに」しこりを相談したことで見つかりました。
気になっていること、ありませんか。次に病院に行くとき、ひとつだけでいいので「ついでに」聞いてみてください。
40歳を過ぎたら、乳がん検診は2年に1回が目安です。「まだ大丈夫」の2年は、あっという間に過ぎます。
②骨に、少しだけ体重をかける
激しい運動でなくて大丈夫です。かかとを上げて、ストンと落とす。これだけでも骨には刺激が届きます。
私はヨガとフラダンスを続けていますが、続けられている理由は「楽しいから」以外にありません。続かない運動に、意味はないんです。
食事では、タンパク質・ビタミンD・K2・マグネシウムをセットで意識してみてください。納豆と魚と、日光は朝起きて3時間以内に浴びると睡眠の質が上がります。
③娘さんや、まわりの若い人に伝える
もし身近に中高生の女の子がいたら、「困ってることある?」と一度聞いてみてほしいなと思います。
生理のこと、着替えのこと、ユニフォームのこと。言い出せずにやめてしまう子が、いまも半分近くいるという現実があります。
声を上げていいと知ることが、最初の一歩です。
まとめ
2026年7月16日のあさイチは、前半と後半で、同じことを言っていました。
- 西加奈子さん:あなたの体のボスは、あなた
- なでしこジャパン:おかしいと思ったら、声を上げていい
40代の私たちは、我慢することに慣れすぎているのかもしれません。「こんなことで病院に行くなんて」「みんなも同じだし」。
でも、体のボスは自分です。誰かに決めてもらうものじゃない。
放送を見て、西さんの言葉をもっと知りたくなった方は、ぜひ『くもをさがす』を読んでみてください。治療の記録であり、同時に「自分をどう認めるか」という問いの記録でもある一冊です。決して重たいだけの本ではなく、西さんらしいユーモアがあちこちに散りばめられていて、読み終えたあとに不思議と力が湧いてきます。
あなたの体のボスは、あなたです。今日、ひとつだけでも自分のために選んであげてくださいね。



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